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ぼくが使っている配信環境と今後使用する予定の配信環境まとめ in 2021

前置き

先日、RTAコミュニティのユーザー達がTwitter上で自身の配信環境を公開するブームが生まれました。 その先駆けとなったのは、恐らく勘違いでなければ私の以下のツイートでした。

自身の環境を皆が公開することで配信技術のノウハウが蓄積されていくのは良い流れだと感じています。 ただ、私のツイートを始めとした多くのツイートではどのような配線図となっているか、どのような機器を使用しているかしかわからない為、以下のツイートのような意見を持つ方もいらっしゃったかと思います。

そこで今回は誰かの参考になれたらという願いも込め、私が使用している配信環境とその機材、更に今後使用を予定している配信環境と機材についてざっくりと紹介する記事を執筆することにしてみました。

私が使用する配信環境の前提条件

配信環境と言っても各個人に応じてどのような配信環境が必要なのか、というのは異なるかと思われます。 ですのでまずは最初に自分が求めている配信環境の条件というものを羅列しておきます。 これから紹介する配信環境については以下で羅列する条件に基づいて構築している、とお考えください。

  1. 可能な限り低遅延を目指す
    RTAを行う以上、操作や反応に有する時間は短くしたいものです。 特に反応時間が重要なアクションゲームなどをプレイする場合は影響が大きいため注力する必要があります。 私はRPGRTAを中心にプレイしているのでそこまで致命的な影響は無いのですが、やはり操作時間を極力短縮したいのと、私が行っている内藤九段将棋秘伝のRTAは1フレームの差も致命的になるゲーム性となっているので可能な限りここは注力します。
  2. 可能な限り高画質を目指すが、複雑なセッティングは(今の所は)回避する
    画質が良いことによってデメリットになる所はその分金銭的コストがかかるという点くらいで、コストに関しては私は特に気にしてないので可能な限り高画質を目指します。 ただ私自身あまり映像の画質を追求する関連知識に自信が無いので*1設定面はそこまで力を入れないことにします。
  3. 使用するモニターは液晶モニターに限定する
    私が生活している部屋スペースの都合や重量などの取り回しにくさ、入手性や動作寿命の問題などからブラウン管モニターの使用は回避します。
  4. 可能な限り映像信号受付時間を短くする
    私がRTAを行っている作品の中には電源投入直後から計測を開始する作品がいくつか存在します(アークザラッドシリーズ、DQシリーズなど)。 映像の信号受付が遅い機器を使用してしまうと電源投入から数秒の間映像がキャプチャできない問題が発生してしまい、RTA動画のアーカイブを残す点で致命的な問題に繋がります。 本音を言うと計測ルールの方を変更して欲しいんですけどね…… また、上記のような機器を使うとゲーム中に出力解像度が切り替わるゲーム*2をプレイしている際に度々映像が途切れてしまいます。

私が現在使用している配信環境

というわけでようやく本題に入ります。 Twitterでは現在使用している環境と、今後使用を検討している環境の2種を紹介したので、両方とも改めて紹介したいと思います。

配線図

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Twitterで公開したものから一部変更し、私が所持している複数のゲーム機に合わせた配線パターンを追加しました。 ちなみに配線図の作成に関しては巷で有名なdiagrams.net(旧draw.io)を使用しています。 今回初めて使用しましたがエクスポート機能が豊富だったり直感的なGUIだった為とても使いやすかったです。 なお私は俗に言うセレクター的な物は使用していません。電源投入直後から計測を行いたい作品があるのと、物理的なスペースの都合上デスクの周囲にゲーム機本体を並べることが難しい為です。

以下、使用している機器について1つずつ紹介します。

RAD2X(アップスキャンコンバーター機能付きAVケーブル)

www.retrogamingcables.co.uk www.retrotink.com

ゲーム機に接続するAVケーブルです。一般的なAVケーブルと大きく違うのは端子をHDMIに変換してくれる点です。 レトロゲーム機の映像を液晶モニターに出力するには一般的に以下の2つの方法が存在します。

  1. アナログ信号に対応したキャプチャーボードに接続し、キャプチャした映像をモニターに出力する
  2. アップスキャンコンバーターを使用しデジタル信号に変換し各種機器に接続する

前者が一番簡単な方法で、実際に行っている方も多いかと思います*3。 ただしこちらの方法は仕様上どうしてもある程度の映像遅延が発生してしまいます。 参考程度の情報ですが、HDMIキャプチャーボードの映像をOBSにキャプチャしプレビューを行った映像の遅延を計測した所、30ms(60fpsのおよそ2フレーム分)の遅延を確認しました。

というわけでコストと手間はかかりますがデジタル信号への変換を行う方針で考えていきますが、アップスキャンコンバーターも物によっては変換処理に時間がかかり無視できない遅延が発生してしまいます。 今回紹介するRAD2Xはケーブル内部にRetroTINK-2Xという超低遅延アップスキャンコンバーターを同梱したケーブルで、変換に要する遅延はわずか100マイクロ秒です(0.1ms、60fpsのおよそ0.00625フレーム分)。 さらにRGB出力に対応したゲーム機であればRGBで出力した映像を変換してくれるので映像も高画質になり、解像度切替の暗転時間もかなり短いと至れり尽くせりな機材です。 ただし、映像出力解像度は480p固定となっておりそのまま利用すると利用環境を選ぶなどの欠点も存在します。 詳しくはMDBBSの残党さんという方が以下のページで(内部で使われているRetroTINK-2Xを)詳細に紹介を行っているので、興味がある方はご確認ください。 www.mdnomad.com

ちなみにRetroTINK-2Xを使用せずRAD2Xを使用している理由は、購入時期に高品質なケーブルが同時に欲しかったからというのがありました。手持ちのRGBケーブルは品質が微妙ですぐノイズが発生するので……。

Open Source Scan Converter(アップスキャンコンバーター)

videogameperfection.com

FC、SFCPS2のAVケーブルはRAD2Xを使用していましたが、Wiiの場合はごく一般的なコンポーネントケーブルから出力を行います。 もちろんこのままではHDMIキャプチャーボードに接続できないので変換を行いますが、今回は通称OSSCというコンバーターを使用します。 OSSCはRetroTINK-2Xと同様に超低遅延かつ解像度切替にも強い(ややRetroTINK-2Xには劣ります)コンバーターで、RetroTINK-2Xと比較した強みとしては映像出力設定をかなり細かく設定できる点です。 同期設定、フェーズ調整などの非常に細かい所まで調整できるので、アーケード基板などの映像出力が難しい機種を使う方や、画質を極限までこだわりたい方には今なおおすすめできる製品だと思います。まあ私は面倒なので設定は適当ですが……😇

欠点としては対応端子が少なめな点や、映像出力解像度が整数倍しか選べずこちらもそのままだと利用環境を選ぶ点などです。 こちらもRetroTINK-2X同様詳しくは以下のページで紹介されているので興味をお持ちの方はご確認ください。 www.mdnomad.com

コンバーターの中から今回OSSCを選択した理由は、私が所持しているコンバーターはRAD2X以外だとOSSCとフレームマイスターのみで、映像遅延の少なさからOSSCを選択しています。

mClassic(低遅延ビデオスケーラー)

www.marseilleinc.com

OSSCから出力した映像は、元解像度の整数倍しか選べない為利用環境を選んでしまいます。 映像が映るモニターを使用していても、モニターによっては映像のスケーリング処理に時間がかかり遅延が増えてしまうケースが存在します。 私が使用している機材は480pの映像をほぼ遅延なしで正常に受け付けますが、変換後の映像の後処理も兼ねて映像を加工してくれるビデオスケーラーを使う場合があるのでこちらも紹介します。

こちらのmClassicは低遅延で映像解像度を1080pまたは1440pに変換してくれるスケーラーです。さらに映像にアンチエイリアス効果をかけたり深度調整をかける映像補正機能も付いています。 欠点としては映像補正機能をOFFにすることができない点で、例えば2Dのドットグラフィックゲームなどで使用すると不自然な映像になってしまいます。

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2DドットグラフィックゲーでmClassicを使用した例
私はWiiをプレイする場合主に3DレースゲームのソニックRをプレイするのでこの補正機能もプラスに働くと考え使用しています。

HDMI音声分離器

HDMIに映像を変換しましたが、これをそのままキャプチャーボードに接続しPC上からゲーム音を聞くとわずかですが遅延が発生し、映像と音声がズレてしまうのでこちらも対応策を用意しています。 まずは下準備としてHDMIから音声のみを別に抽出する音声分離器を使用します。

www.amazon.co.jp

音声分離器の定番製品については調べても出てこないので、適当にAmazonから高評価だった物をポチって使用しています。 自分が使ってるこの製品はHDMI入力端子から入力した映像の音声をRCAケーブルまたは3.5mmケーブルに分配し、映像をHDMI出力端子から出力します。 また、出力される映像には音声も変わらず出力されるのでそのままキャプチャーボードに接続すればそのままキャプチャーできて便利です。 ただ購入して数日以内に音声が一切鳴らなくなる不具合が一度発生したので、品質が良いかと言われると怪しいところがあります。 もし読んでいる方の中にオススメの音声分離器を知ってる方いたらご教授頂けると嬉しいです……。

YAMAHA AG06(オーディオインターフェース/ミキサー)

www.soundhouse.co.jp

ヘッドセットを接続し、分配したゲーム音声とPC音声をヘッドセットに出力しつつヘッドセットからのマイク音声をPCに出力するために使用します。 これにより、ゲーム音声を遅延なしで聞くことができるようになります。 上記を実現するだけなら一般的なUSBヘッドセットなどであればAG06のようなオーディオインターフェースは必須ではないのですが、今回使用するヘッドセットはXLR端子での接続が必要な為このようなオーディオインターフェースが必須です。 AG06の強みはUSBで簡単にPCへ接続できることやミキサーとしても使える点、ループバック機能やエフェクト機能など多くの配信者向き機能が揃っている点です。 ちなみに接続端子の数は減りますが数千円安いAG03という機種もあるので、興味のある方は比較しながら選ばれると良いかと思います。 私は大は小を兼ねる理論でAG06の方を選択しました。

Audio-Technica BPHS1(ヘッドセット)

www.amazon.com

ダイナミックマイクが付いているヘッドセットです。日本では販売していないので米Amazonから購入しました。 こちらはかのGames Done Quickでも採用実績があり、オフラインのRTA in Japanでも採用しているという点から興味を持ち購入しました。 マイクの音質、ヘッドホンの音質共に自分の感覚としてはとても良好であり、性能面では満足しています。 唯一の欠点としては、長時間(体感4~5時間程度)装着していると両耳に痛みが生じる点です。こちらも何か良い感じの解決策があれば是非アドバイス頂きたいです……。

キャプチャーボード(Elgato Game Capture HD60 S)

www.amazon.co.jp

定番の外付け型HDMIキャプチャーボードです。パススルー機能に対応しているのでこのキャプボを通してモニターに接続しています。 他にも多くのHDMIキャプボがある中でこちらを使用している理由は、映像の信号受付時間が比較的早めである為です。 欠点は解像度を頻繁に切り替えると場合によってはキャプチャが固まってしまう点です。RAD2Xの480p出力であればだいたい大丈夫でした。

なお私は他に2つHDMIキャプボを所持しているので、こちらも軽く紹介します。 www.amazon.co.jp

1つはAVerMediaのGC573という内蔵型4K対応キャプボです。 こちらは受け付ける解像度はとても幅広くキャプチャが固まることも一切無いのですが、映像の信号受付時間が非常に遅いので今はあまり使用していません。 www.micomsoft.co.jp

もう一つはマイコンソフトのSC-512N1-L/DVIという内蔵型キャプボです。 こちらは対応解像度も多く対応する端子も非常に豊富でしかも信号受付時間も私が知る限り最速なのですが、残念ながらAMD環境をサポートしておらず私の環境(Ryzen7 3700X)で使用するとブルースクリーンになります😇 外付けのXCAPTURE-1という機種であればAMD環境でも(サポートはされてませんが)動作するという報告は聞いているので、こちらの購入をオススメします(あまり入手性は高くないですが……)

液晶モニター(I-O DATA EX-LDGC241HTB2)

www.iodata.jp

長くなりましたが最後の機材です。3年前に発売されたI-O DATAのゲーミングモニターです。 スペックとしては24インチのTNパネルモニターで、リフレッシュレートが144Hz、応答速度は最大0.7msを謳っています。 さらに内部遅延時間の短さをアピールしている製品で、実際に計測したところ3ms程度の遅延だったので十分実用的です。 他にも内部ビデオスケーラーの性能が申し分なく、480pや720pといった解像度の映像を入力してもほぼ映像遅延が発生しませんでした。(ただしインターレース映像は2フレーム程度の遅延が発生してしまいます) 欠点は映像の信号受付が非常に遅い点です。電源投入直後から操作が必要な場合は仕方なくOBSのキャプチャ画面を見て操作しています。

購入した当時は144Hzかつ低遅延のモニター欲しいな~というふんわりした理由で適当に選んで購入したのですが思ったより実用的で助かってます。 ただもう生産終了している古い機種なので今なら他のゲーミングモニターを購入することをオススメします。 私が今気になっているのは某大手イベントでも採用実績のあるViewSonicのVX2476(2776)-SMHシリーズです*4。遅延が少なく画質も良好らしいので高リフレッシュレートが必要で無ければこちらをお試し下さい。

私が今後使用する予定の配信環境

引き続き、今後予定している配信環境について紹介を行います。なお前述している使用中の配信機材と同じものは説明を省略しています。

配線図

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現在使用している物から更にシンプルになったかと思います。 変更点をざっくり説明すると、HDMI出力の無いレトロゲーム機からは全てコンポーネントケーブルで出力を行うようにし、RetroTINK-5Xという新製品を通してHDMI音声分離器に通すという流れにしました。 OSSCとmClassicが配線図から無くなりましたが、これはRetroTINK-5Xの恩恵によるものです。以下詳しく説明します。

HD Retrovision製コンポーネントケーブル

www.hdretrovision.com

RetroTINK-5Xの紹介の前に、まずはレトロゲーム機に接続するコンポーネントケーブルについても紹介をします。 こちらのHD Retrovision製コンポーネントケーブルはレトロゲーム界隈では高品質であることで有名で、RetroTINK-5Xのマニュアルでも使用を推奨されているケーブルです。 今後の配信環境ではRAD2Xを使用せずRetroTINK-5Xを通すので、高画質を目指すには別途コンポーネントケーブルあるいはRGBケーブルを用意する必要がありますが、RGBケーブルは品質の差が激しいので公式で推奨されているこちらのケーブルを使用することにしました。 なおSFCなど本来コンポーネント出力が無い機種のケーブルについては、ケーブル内部でRGBから変換を行うことで実現しているようです。

なお自分が購入したのはPS2/3用のケーブルとWii用ケーブルの2種です。SFCは現状あまり遊ぶ予定が無いのでスルーしました。後で買うかもしれません。 FCに関しては配線図からは省略しましたが前回と変わらずRAD2Xを使用する予定です。理由としてはRAD2Xを使う方が遅延が少なく(理由は後述します)、前述した通り内藤九段を遊ぶ場合は極限まで遅延を減らしたい為です。

RetroTINK-5X

www.retrotink.com

今年5月頭に発売されたばかりの低遅延アップスキャンコンバーターです。発売前から全世界のレトロゲームユーザーから注目されていて販売開始後わずか8分で売り切れてしまい、次回の入荷は6月あるいは7月を予定しています。 この機種が持つ特徴は以下のとおりです。

  • コンポジット、S端子コンポーネント、RGB21/SCARTと対応端子が多い
  • 240p,480i,480pの映像を1080pに出力してくれ、1440p出力も可能
  • フェーズ調整を自動で行う為難しい設定無しで高画質の映像を出力できる
  • 機種の互換性を高めたトリプルバッファモードを用意(デフォルト設定)、低遅延のモードも用意(フレームロックモード)
  • 解像度切替に非常に強い(特にトリプルバッファモード)
  • インターレース機能が強化されMotion Adaptiveを始めとした多くの解除方法を選べる
  • 各ゲーム機に合わせたサンプリングプリセットを選択することが可能
  • リモコンが付属され設定が容易に
  • ただし遅延は増えている(フレームロックモードで1~3ms前後、トリプルバッファモードの場合は3~16ms前後?)
  • 値段も性能相応に上がっている(2Xは送料込みで約16000円、5Xは送料込み約36000円)

mClassicに頼らずとも1080p出力が可能なので環境を選ばなくなり、OSSCのような難しいセッティングなしでシャープな映像を出力できる優れものです。 デインターレース機能が豊富になったのも魅力的ですが、特に自分が惹かれたのはトリプルバッファモードの存在です。これにより課題としていた電源投入時の映像キャプチャ問題を解決できる可能性が高いです。 そのため5Xを入手したら使用するキャプチャーボードはキャプチャが安定しているGC573に切り替えようかと考えています。ただし5XでもGC573の信号受付の遅さを解消出来なければ今まで通りHD60Sを使う予定です。

また5XについてもMDBBSの残党さんが既に入手しており情報をまとめてくださっているので、詳細は以下のページや公式マニュアルを参照して下さい。随時キャプチャ動画もアップしてくれています。 www.mdnomad.com

余談ですが、OSSCもフルフレームバッファモードや1080pの出力機能、Motion Adaptive等のデインターレース機能を追加したOSSC Proなる新製品が予定されています。こちらは今年中の発売を予定しているそうです。


www.youtube.com

まとめ

というわけで私が現在使用している機器や、今後使用を考えている機器の紹介を行いましたがいかがだったでしょうか。 参考になったという方が1人でもいれば幸いです。 また、他の方にも同じような記事を書いて頂けると私自身とても参考になるので追従してくれる方が現れると嬉しいですね(チラッチラッ

以上、想定したよりもかなりの長文になってしまいましたがこれにて本記事は締めとさせて頂きます。読んで頂いた皆様ありがとうございました。

*1:色範囲、フィルター処理、同期設定、フェーズ調整、その他etc……

*2:有名なのはクロノクロスなどの当時のスクウェアゲー、風のクロノア2など

*3:GV-USB2に接続してアマレコTVから映像出力などが一般的

*4:言って良いのかわからなかったので一応どこかは伏せときます